【2017/04/13 公開 閲覧無料】『株式市場の“盲点”を斬る!』第254回


『東芝のような突然死リスクを見分ける方法』


日立製作所と並び、日本の総合電機の代表だった名門、東芝が解体の危機に瀕しています。

米国の原発事業で巨額の特別損失が発生し、16年度に1兆円を超える巨額赤字を計上する見通しになりました。16年度末に債務超過に転落することが避けられないため、虎の子の半導体メモリー事業を売却する方針を示しています。

東京証券取引所は現在、内部管理体制に問題があり、上場廃止基準に抵触する恐れがあるとして、東芝株を特設注意市場銘柄に指定しています。

2度延期した17年3月期第3四半期決算を4月11日に提出しましたが、監査法人による適正意見を得ることができないという異例の事態に。

今年8月に同社株は東証1部から2部に降格、日経平均採用銘柄から除外されることが確実になりましたが、東証の審査次第では、「上場廃止」の可能性もあります。

時価総額は一時8000億円程度まで下がり、経営再建中のシャープ(2兆5000億円)に大きく水をあけられている状況です。

東芝のように、「突然死」を防ぐため、投資家なら押さえておきたい会計用語について、今回はわかりやすく解説しようと思います。

■のれんってなんだ?

決算短信をご覧になったことがあると思いますが、資産の部に「のれん」という項目を目にしたことはないでしょうか。

のれんとは、企業買収に係った費用から買収した企業の資産を引いたものを差します。

*のれん=買収資金-買収した会社の純資産

実は、東芝のように突如として巨額の損失を計上する企業には、のれんという共通項があるのです。

通常、企業買収の際には、既存株主から理解を得やすくするため、時価にプレミアム(上乗せ分)をつけて買収するケースが多く、多額ののれんが発生することが多くあります。

東芝は、2006年に約6000億円を投じて米原発会社ウエスチングハウス(WH)を買収しました。

WH社には2000億円程度の資産しかなかったため、差額の4000億円がのれんとして資産の部に計上されていたわけです。

■国際会計基準が仇

日本会計基準であれば、買収にともなうのれんが発生した場合、毎年一定額償却する必要があるとされています。

通常10年~20年でのれんを償却するケースが多く、WH社を買収した2006年以降の10年間で400億円ずつ償却していれば、今回の1兆円を超える巨額損失が生じることはなかったとみられます。

ただ、東芝は米国会計基準を採用していることから、のれん償却ルールが異なります。同会計基準では、「会社の価値が低下した場合」のみのれんを償却するとされているため、買収から11年経って、4000億円分一気に処理する必要に迫られたのです。

日本の上場企業が採用する会計基準は3種類あり、「日本会計基準、米国会計基準、IFRS(国際会計基準)」の3種類に大分されます。

この中で、のれんの定額を求めているのは、日本基準のみとなっています。

つまり、米国、IFRSを採用し、のれん計上額が多い企業は、事業環境の変化如何で巨額損失を計上する可能性があり、突然死のリスクがあるといっても過言ではありません。

■突然死リスクが高い企業は?

のれんが多い企業は、第2の東芝になりかねないリスクがあります。

のれん計上額が多いだけで単純比較はできませんが、自己資本の50%を越えるのれんを計上し、かつ、定額償却を求めない、米国会計基準、IFRSを採用している企業は注意しておいた方が良いでしょう。

時価総額が1000億円を越える銘柄のうち、自己資本の50%超ののれんを計上している主な企業はご覧のとおりです。

【9984】ソフトバンクグループ (122%、4兆8589億円)
【5202】日本板硝子 (107%、1086億円)
【4755】楽天 (74%、5060億円
【4324】電通 (73%、7187億円)
【2914】JT (63%、1兆6019億円)

(*かっこ内の数字は、16年12月末時点の自己資本に占めるのれんの比率、金額はのれん計上額)

(*楽天はのれんの純額を開示していないため、のれんを含む無形資産の総額)

ソフトバンクグループの自己資本には、アリババ株などの含み益が反映されていない実態よりも数値が高くなっていますが、5兆円に迫るのれんは国内の上場企業として最大額です。

米スプリントや英アームの事業環境が悪化した場合、数兆円規模の損失計上リスクについては、株主であれば知っておく必要があります。



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